文學ラボ@東京

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レビュー:舞城王太郎『スクールアタック・シンドローム』

 

短編集『みんな元気』から 「スクールアタック・シンドローム」、「我が家のトトロ」を抜粋し、描きおろし短編「ソマリア、サッチ・ア・スィートハート」を加えた構成でできているのが、この文庫『スクールアタック・シンドローム』です。舞城というとデビュー作『煙と土と食い物』の奈津川サーガに代表されるように、テーマとして家族に重きを置く印象がありますが、表題作の「スクールアタック・シンドローム」でも家族、特に父親と息子の絆の話が繰り広げられます。

 

父親は仕事を辞め酒浸り、日がなソファの上でDVDを見る毎日を送っています。別居中の息子は、学校の友人の殺し方について詳細にノートに書き続けています。そのような背景の中で、この状況を打破するための道具として、舞城は暴力を使います。今回の場合は、なんの前触れもなく登場する暴漢。DVDを見ていた主人公の部屋に突然現れ、襲いかかる暴漢を、主人公は撃退します。暴漢の耳を食いちぎって。

 

このようなストーリーテリングは舞城作品の十八番です。災害のような暴力を描写することで、作者は感情と行動のスイッチを物語に入れます。文章にエンジンがかかったあとは、物語は作者の独壇場です。この表題作は短編であるため、そのような暴力の取り回しを純粋に楽しめる作品となっています。舞城の純文方面の才能を味わいたい方におすすめの作品です。

 

 

 

スクールアタック・シンドローム (新潮文庫)

スクールアタック・シンドローム (新潮文庫)