文學ラボ@東京

(文学をなにかと履き違えている)社会人サークルです。第22回文学フリマ東京では、ケ-21で参加します。一緒に本を作りたい方はsoycurd1あっとgmail.comかtwitter:@boonlab999まで(絶賛人員募集中)。

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2000年~2010年までの芥川賞受賞作品の傾向について

はじめに

2000年代の芥川賞受賞作品の傾向についての考察を行っていく。なお、筆者のバックボーンは純文学というよりはジャンル小説よりのため、圧倒的知識不足の中このエントリを記述した。指摘等どしどしお待ちしております。

結論

特に傾向はない。

受賞作品一覧

wikipediaより、

2000年代

第123回(2000年上半期) - 町田康「きれぎれ」、松浦寿輝「花腐し」

第124回(2000年下半期) - 青来有一「聖水」、堀江敏幸「熊の敷石」

第125回(2001年上半期) - 玄侑宗久「中陰の花」

第126回(2001年下半期) - 長嶋有「猛スピードで母は」

第127回(2002年上半期) - 吉田修一パーク・ライフ

第128回(2002年下半期) - 大道珠貴「しょっぱいドライブ」

第129回(2003年上半期) - 吉村萬壱ハリガネムシ

第130回(2003年下半期) - 金原ひとみ蛇にピアス」、綿矢りさ蹴りたい背中」(最年少受賞)

第131回(2004年上半期) - モブ・ノリオ「介護入門」

第132回(2004年下半期) - 阿部和重グランド・フィナーレ

第133回(2005年上半期) - 中村文則「土の中の子供」

第134回(2005年下半期) - 絲山秋子沖で待つ

第135回(2006年上半期) - 伊藤たかみ「八月の路上に捨てる」

第136回(2006年下半期) - 青山七恵「ひとり日和」

第137回(2007年上半期) - 諏訪哲史「アサッテの人」

第138回(2007年下半期) - 川上未映子「乳と卵」

第139回(2008年上半期) - 楊逸「時が滲む朝」

第140回(2008年下半期) - 津村記久子「ポトスライムの舟」

第141回(2009年上半期) - 磯崎憲一郎「終の住処」

第142回(2009年下半期) - 該当作品なし

以上作品について、アドホックに(≒勘で)タギングしていく。

評価

作家 売れる度*1 技巧度*2 文学世界拡張度*3 カテゴリ
町田康 ** *** *** パンクロック, 人生
松浦寿輝 ** *** * 伝統芸能
青来有一 * *** * 伝統芸能, 安定感
堀江敏幸 ** *** * 伝統芸能, 面白さレベルがやばい
玄侑宗久 ** ** * 伝統芸能, 宗教
長嶋有 *** ** ** なうい
吉田修一 ** ** ** 舞台縛りゲー
大道珠貴 ** * * 伝統芸能
吉村萬壱 * * * 伝統芸能, デビュー作のときの魂を思い出せ
金原ひとみ *** * * 伝統芸能, 若さ, この後才能開花
綿矢りさ *** * * 伝統芸能, 若さ
モブ・ノリオ ** * ** ラップ
阿部和重 *** *** ** おつかれさま受賞
中村文則 ** * * 伝統芸能, 若さ, なぜ受賞したし枠
絲山秋子 ** *** ** 伝統芸能
伊藤たかみ ** * * なうい?
青山七恵 - - - 未読
諏訪哲史 * * *** ポストロック, 厨二
川上未映子 *** *** ** 伝統芸能, 身体性, 強い
楊逸 ** ** * 伝統芸能, グローバル
津村記久子 ** *** * 伝統芸能, 良い
磯崎憲一郎 * *** *** 世界文学, カメラワーク

考察

上のカテゴライズについては、伝統芸能≒ベタ、という認識で行っている。

それを踏まえて、2000〜2010年の芥川賞作家については、ほとんどが既存の日本文学の世界観の上で戦っていることがわかる。 そこからはみ出すことを試みているのは、町田康吉田修一阿部和重諏訪哲史磯崎憲一郎あたりだろうか。*4 この年代の作家については、日本文学の潮流を作ることができていないのも特徴だと思われ、 町田康->川上未映子の流れ(文体レベル)以外は、特に誰もこの中でフォロワーを持っていない印象を受ける。 (エンタメ方面には長島有の影響が大きそうだが、芥川章作家方面には影響力ほぼなしの印象。)

つまり日本文学はこのようなスパンでは更新されておらず、 もっと長期的な視野でしか変遷を語ることができないと思われる。もっと年代を遡った考察が必要だろう。 *5

独自世界を構築している作家の中では、 売れている*6&書けている作家として金原ひとみ阿部和重川上未映子*7がおり、 この辺の作家のフォロワーが次世代に現れた際に、 日本文学のマップが更新されると思う。*8

おわりに

2010年代の作品については未読作が多いため、後日考察予定。 ライトノベル・SF・ミステリ等のジャンル詳説ではもう少し短いスパンでトレンドが見えると思われるので、そちらとの比較も行っていきたい。

クチュクチュバーン (文春文庫)

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世紀の発見 (河出文庫)

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アサッテの人 (講談社文庫)

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介護入門 (文春文庫)

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*1:売れそうな雰囲気のレベル≠部数

*2:技術レベル

*3:文学の体系を更新し得るか

*4:磯崎憲一郎保坂和志フォロワーだが、そもそも保坂が日本文学からはみ出ているのではみ出しカテゴリと評価。

*5:上記では『伝統芸能』でくくってしまったが、 本来はもっと詳細化できるはずなので、コメント等ください。

*6:磯崎先生売れてください

*7:長嶋有はエンタメ扱い...!

*8:日本文学の体系を更新した最後の作家を誰か私に教えてください。このままだと村上春樹とか言い出します。